会長随想

会長就任にあたり 共生31号

鹿児島県社会福祉法人経営者協議会の会長に再任され責任の重さを痛感しております。
皆様方のご協力を頂きながら、社会福祉の充実に向けて努力して参りたいと思います。
平成の時代30年間は、自然災害の多い時代でありました。また、社会福祉制度の改正が続いた時代でありました。株式会社等、営利企業の参入もあり、競争の時代でありました。そのため社会福祉法人のおかれた環境も大きく変化致しました。
新しい令和の時代は、2040年問題をはじめとする人口減少時代にどう対応していくか、とりわけ地方の衰退は加速度的に進行していく事が予想されています。
国は地域共生社会の施策を強化すべく、社会福祉法人の合併統合を促すための「社会福祉法人の展開等に関する検討会」を設置し、学者や経営協をはじめ老人・障害・保育の各団体代表者が委員として参画し議論が始まりました。
私もこの議論に参加していますが、私を含め、社会福祉法人関係者は、合併統合よりも連携による取り組みを優先して進めた方がいいのではないかという意見が大勢を占めております。そのためにも鹿児島でも始まりました「かごしまおもいやりネッワーク事業」などの社会福祉法人の連携による取り組みを拡げていくことが重要であると考えております。地域の公益的取り組みが責務化され、社会福祉法人への期待が高まっている今こそ、このような実践が重要になってくるものと思います。
また、この法人間の連携事業は、全国で取り組みが求められております災害時の支援活動にも活動が拡がっていく事も期待されています。すでに全国のいくつかの都道府県において災害支援派遣チーム(DWATDCAT)の組織化がなされ、西日本豪雨災害等でも活躍をしています。これらの体制づくりにも法人間の連携での取り組みが期待されています。
鹿児島県においても令和元年度中に災害支援員の養成を始め、体制作りに着手することになっています。県経営協をはじめ各種別団体と協調して対応することになっております。
これらの取り組みは「地域共生社会」実現の第一歩として重要視されています。皆様方のご参画いただきますようご理解ご協力をお願い申し上げます。
新しい年号に変わった今年度も皆様方へ迅速な情報提供と各種研修等を通じ、経営の一助となるよう取り組む所存です。何卒よろしくお願い申し上げます。 

社会福祉法人をめぐる動向 共生30号

  今年は、元号が変わり、消費税が10%に上がる予定となっております。また、働き方改革の実施により、有給休暇や時間外勤務の取り扱いなど労働環境も大きく変わり、さらには同一労働同一賃金の枠組みの元、私ども福祉現場も大きな変化が生じ、対応が求められる年になります。
  昨年末に成立しました改正入国管理法の改正により、本格的な外国人介護人材の受入も始まります。5年で最大6万人の介護人材を受け入れることになります。福祉現場の人材確保への期待の声と課題も聞こえてきます。また、抜本的な人材確保対策にはなり得ないとの声も聞こえてきます。国としても人材確保の体制整備策として厚生委労働省内に介護現場革新会議が発足させ、対応を強化していくものと思われます。引き続き、有効かつ効果的な人材確保策を要望していきたいと考えています。
  昨年は、介護報酬と障害報酬のダブル改定が実施されましたが、既に次期の報酬改定の議論も始まっております。私ども福祉現場の実状が反映されるよう今年も全国社会福祉法人経営者協議会を通じ、国にも働きかけていきたいと思います。
  政府は、社会福祉法人の在り方についても年末に経済財政諮問会議において2019年度から3年間の改革工程表を決定しました。中身としては、社会福祉法人の経営統合や運営の共同化を検討し、2020年度末までに1法人あたりの事業所数を増やすことが盛り込まれています。これらの方向性に対しては、地域の実状を十分加味した制度設計が必要であると思われますので、慎重な議論が必要であると考えております。
  県経営協においては、昨年7月から複数の法人連携により生活困難者への支援を行う目的に「かごしまおもいやりネッワーク事業」がスタート致しました。年度途中からのスタートにもかかわらず、県社会福祉協議会や市町村社会福祉協議会を含め、85法人の参画を頂き、順調に動き出すことができました。
  「社会福祉法人は非課税法人で公益性の高い法人にも関わらず、地域貢献活動を行わず、収益の上がる社会福祉事業だけしか行わない」とのいわれなき批判の声を跳ね返すべく、活動自体も見える化し、広く活動もアピールしていきたいと考えております。また、地域共生社会の先駆けとしての期待も高いものがありますので、これらの期待に副うべくこの事業を根付かせて参りたいと思います。大規模法人はこの事業の基幹的役割が期待されておりますし、また、小規模法人においては、地域の公益取組みに取り組みたくともマンパワー等の課題から取り組みが十分にできないという場合、複数の法人で地域を支えることで「地域の公益的取組の責務化」を果たしていくことになります。
  今後、法人の規模を問わず、この事業の参画法人を増やし、支援の輪を広げ、この事業をしっかりと中身あるものにしていきたいと思います。是非とも積極的なご参画をお願い致します。
  今年も鹿児島県社会福祉法人経営者協議会として会員の皆様に迅速かつ的確な情報提供と詳しい制度内容についての研修セミナーの機会など適宜行って参りたいと思いますので、何卒よろしくお願い申し上げます。

災害支援ネットワークの構築に向けて 共生29号

  鹿児島において鮮明に記憶されている自然災害では、平成586日に発生した豪雨災害、いわゆる「86水害」であろう。死者71名、負傷者142名、建物被害では全壊437棟、床上浸水9118棟という甚大な被害を及ぼした。その際、多くの福祉施設でも被害を受け、給水支援はじめ、様々な支援を受けた。また、一部福祉施設では、避難所としての役割も担った。
  当時は、災害支援のネットワークも十分に構築されておらず、福祉施設は独自での対応が求められ、様々な生活物資を苦労してかき集め、利用者の対応に追われた記憶がある。
  最近の我が国の災害は、これまであまり災害が起こっていなかった地域でも発生し、さらに予期せず、発生するケースが多くみられている。
  今年7月に岡山県、広島県、愛媛県で発生した西日本豪雨災害では、200名を超える死者が出て、今なお多くの人たちが避難生活を余儀なくされている。改めてこの災害で犠牲になられた方のご冥福をお祈りするとともに一日も早い被災地の復旧を心より願いたい。
  全国社会福祉法人経営者協議会(以下、全国経営協)でも災害支援基本方針(平成305月策定)が示されている。全国経営協として基本的な考え方を示すとともに各会員法人、ブロック協議会、都道府県経営協においても災害支援活動が、より積極的に展開されるよう、取り組み内容が提示されている。さらに全国経営協「災害支援マニュアル」も作成され、各会員法人に災害への備えと必要なポイントや考え方各都道府県経営協が果たすべき役割等について解説されている。
  国からも災害時の福祉支援体制の整備に向けたガイドラインが示された。ガイドライン作成時には、国の会議に全国経営協からも委員として参画し、私どもの意見が大いに反映されたガイドラインになっている。
  内容としては、平時のネットワーク会議や事務局体制の整備に加え、災害発生時のネットワーク本部の設置など、常日頃から体制整備を求めるものになっている。
  鹿児島県においても国のガイドラインにそって「災害福祉広域支援ネットワーク協議会」が組織され、鹿児島県の福祉災害ネットワークの議論が始まった。私も県経営協の立場から委員として参画させて頂き、福祉災害支援ネットワークのあるべき方向性を議論して参りたいと考えている。
  現在の課題認識としては、「かごしまおもいやりネットワーク事業」同様に、どれだけの社会福祉法人に賛同して頂き、参画意識をもっていただけるかということである。
  岡山県においては、今回の豪雨災害では、既に組織されていた岡山県DWATが活躍し、県内で被災されていない地域の法人から被災地に物心両面からの支援活動がなされたと聞いている。
  是非とも鹿児島県でも早急に災害支援ネットワーク作りを構築したいと考えている。

地域の公益的取組みと地域共生社会を考える 共生28号

厚生労働省は、平成287月に「我が事・丸ごと」地域共生社会実現本部を設置し、地域全体で支える力の再構築と分野を超えた包括的な支援体制の整備を目指した「地域共生社会」の実現に向けた取組を積極的に進めている。

平成2927日に閣議決定された「地域共生社会」の実現に向けて(当面の改革工程)の中で、2点の改革の方向性が示された。

一点目が、公的支援の「縦割り」から「丸ごと」への転換、二点目が「我が事」・「丸ごと」の地域づくりを育む仕組みへの転換である。

具体的には、個人や世帯の抱える複合的課題などへの包括的な支援、人口減少に対応する分野をまたがる総合的サービス提供の支援、住民の主体的な支え合いを育み暮らしに安心感と生きがいを生み出す、地域の資源を活かして暮らしと地域社会に豊かさを生み出す、ことなどが示されている。

特に社会福祉法人には、地域の中での「複合的課題などへの包括的支援」や「分野をまたがる総合的サービス提供」を実現するため、分野ごとに展開する相談支援にとどまらず、あらゆる相談を受け付け、適切なサービスにつないでいく「総合相談窓口」の機能が期待されている。

全国社会福祉法人経営者協議会においては、社会福祉法人における公益的取組みを推進すべく、これまでも一法人一実践活動や複数法人の連携による地域貢献活動の展開を提唱してきた。こうした取組みの中においても地域ニーズを確実に把握できる総合的相談機能の重要性が大きくなっていることは言われていた。

鹿児島県社会福祉法人経営者協議会では、ご承知の通り、平成30年7月から「かごしまおもいやりネットワーク事業」を立ち上げ、参画する各社会福祉法人にコミュニティソーシャルワーカーや相談員の配置をして頂き、地域の様々な福祉ニーズをキャッチし、社会福祉法人間の連携により様々な福祉ニーズに対応をしていく事になった。この事業の特徴は、行政、市町村社協、民生委員・児童委員の皆様方も一緒に取組んでいくことである。そういう意味からも地域共生社会の先駆けなる取組みになることも期待されている。

また、この事業に係る人材を育成するため鹿児島県社会福祉協議会とタイアップして養成研修を行うことにしている。これは、これから国の制度政策の柱となる地域共生社会の担い手を養成する役割も担う意味も持つことになろう。

社会福祉法人の複数連携で行うこれら事業は、社会福祉法人として地域の公益的取組みの責務化を果たすことは勿論だが、それにとどまらず、地域共生社会を推進する意味で大きな役割も発揮できるものと考えている。まさに、社会福祉法人が地域の共生社会の中心軸として役割を担うことが期待されている。

改正社会福祉法で定められた理念とは 共生27号

わが国の社会福祉は、少子高齢社会の到来とともに様々な課題を抱えながらも福祉改革を相次いで行い整備されてきた。とりわけ、需要と供給のアンバランスやサービス給付システム、利用者負担の在り方などが大きな課題としてのしかかり、社会福祉法改正や介護保険法の施行を契機に福祉制度の転換が図られることになった。

社会福祉事業法が社会福祉法に改正されたのが平成12年である。この年は、同時に介護保険法の施行や成年後見制度をはじめとする新たな権利擁護システムの導入等、老人介護福祉分野を中心に利用システムの在り方や利用者負担の在り方等が「措置から契約へ」へ変わり、ケアマネジメントの手法が取り入れられるなど、集団的ケアから個別ケアへの転換等を含め、福祉政策の大転換が図られた時期である。

この社会福祉法のコンセプトは、契約に基づくサービス、自己決定の尊重、サービスの選択、事業者との対等な関係、利用者本位のサービスというものであった。それを具現化する上で、サービスの質の向上、情報公開、福祉サービスの第三者評価、苦情解決制度などシステム整備が行われた。要するに戦後から50年行われてきた措置制度が、財政構造を含めて根底から改められたと言えよう。

社会福祉法施行から多くの時間が経過した中、今一度これらコンセプトや制度システムを確認する意味からもこの改革の意図を検証し、今後の福祉サービスの在り方についても議論をしていかなければならない時期に来ていると考えている。

福祉現場において、この数年の変化は、これまでにないスピードで変化を遂げた時期であったといえよう。社会福祉法の施行以来、老人福祉分野において、介護保険制度が同時スタートし、障害福祉分野においても支援費制度から障害者自立支援法の施行と契約化が進んでいった。

さらに官から民への流れの中、福祉サービスの供給量拡大を図る意味から規制緩和が図られ、株式会社等営利企業、特定非営利活動法人等の新たな供給主体の福祉事業への参入も相次ぐことになる。

とりわけ注目される点は、基本理念の転換であろう。社会福祉の目的は弱者保護の視点でなく、自立支援の視点であるとした点が強くなったことである。この自立支援を実現するため、サービス利用者は十分な情報を自ら理解できる方法を受けた上で、サービス選択(自己決定)する権利を有すると解されることになった。まさに利用者本位(user centered services)への転換が図られることになった。

今般の報酬改定の議論を見ていると福祉サービスの質について様々な議論があった。質の良いサービスについて報酬上高く位置付けられないか、質の悪いサービスについては報酬上ペナルティが科せられないかなどの意見が数多く出された。その背景には一部の営利を目的とした提供主体において、収益を前提に利用者本位の理念を掲げる社会福祉法の趣旨から逸脱しているケースがあることを認識しておく必要があろう。

社会福祉法人として福祉向上の責任を果たすために 共生25号

社会福祉法人をめぐるこの数年の変化は、契約制度化がなされた介護保険制度導入時の社会福祉基礎構造改革に匹敵する大きな制度改革であったと思います。

顧みると、平成23年頃からマスコミ等において社会福祉法人に対する批判を目にすることが多くなりました。内部留保が過大、あるいは株式会社等営利企業への福祉参入を促進させるための規制改革の必要性、社会福祉法人への地域貢献の義務化など何れも厳しい意見ばかりでありました。さらに平成26年には、ごく一部の不適切な社会福祉法人を取り上げた大手新聞での連載記事もあり、社会福祉法人に対する風当たりは更に厳しいものとなっていきました。

全国社会福法人経営者協議会では、これらの誤解の多い声に対し反論し、国が考える社会福祉法人の新たな枠組みの改革議論にも積極的に意見し、対応して参りました。

これらの議論は、超高齢社会を迎えた頃から民間営利企業が福祉をビジネスチャンスと捉えられ、主として社会福祉法人にしか認められていない特別養護老人ホーム等、第1種社会福祉事業への参入規制の撤廃や税制優遇の廃止など、民間営利企業等が唱える、いわゆるイコールフィティング論から派生した流れが強く働いているものと感じております。

平成26年には、社会福祉法人への課税の論議が吹き荒れましたが、関係者の努力もあり、何とか社会福祉法人への課税は一時的に回避することができました。ただ、この議論はこれから毎年のように繰り返されるものと思われます。

このような中、社会福祉法等の一部を改正する法律案が国会において成立し、今年度から本格施行されました。定款変更、法人ガバナンスの再編、福祉充実残額の算定、情報公開、地域の公益的取組みの責務化等、年度末から年度初めにかけて対応に追われたことはご承知のとおりです。

このような時期だからこそ社会福祉法人の存在意義をさらに高め、社会福祉法人としての役割を発揮する必要があると思います。これまで以上に地域へ向けた公益的な取り組みを推進し、非営利法人として、地域になくてはならない存在として取り組む必要があると考えています。

ページの先頭に戻る